キャラホビなどのイベントで展示された、1/100ユリシーズのラジコン模型が、海洋研究開発機構(JAMSTEC)にある実験用巨大プールで走行・潜行テストを行なうことになりました。

走行会の模様をストリーミングビデオで公開!!
 ※視聴にはWindows Media Playerが必要です


横須賀市夏島にある
海洋研究開発機構(JAMSTEC)


敷地内にあるプール棟外観
普段は潜水作業訓練などに使用される

プール棟内部
水深3.5Mを誇る

1/100ユリシーズは、本物の潜水艦と同様に、バラストタンクに注水して重くなることにより潜水、バラストタンクから排水して軽くなることにより浮上します。ただし本物の潜水艦では、排水するときバラストタンクに圧縮空気を注入するのに対し、模型では使い捨ての小型ボンベに入った二酸化炭素を使用しています。また本物の潜水艦とは違い、バラストタンクは1つしかないのでこれによるトリム(前後の釣り合い)調整はできません。

そして1/100ユリシーズは、潜舵(艦首の方にある翼のようなもの)は地上での調整しかできませんが、横舵と縦舵(スクリューのところにある翼のようなもの)はラジコン操作で動かすことができ、これによって操縦します。

模型では上のA船体の舵とスクリューしか動きません。ですがユリシーズはその特殊な形状のため横断面積が非常に大きくなっており、そのままだと舵の利きが非常に悪くなってしまうそうです。そこで模型では、縦舵を補助的に大きくしてありました。


透明の板で縦舵を補強している


進水の瞬間


大プールを所狭しと進むユリシーズ
多数参加したプレス達から歓声が上がる

ミサイルハッチも開きます!
芸が細かい!!

一段高い飛び込み台から
ラジコンユリシーズを操作する平尾さん

この1/100ラジコンユリシーズを制作した平尾昌弘さんは、次のように語ってくれました。
「最初ユリシーズの絵を見たときは、率直に『変わった形だな』と思いました。この形自体は制作する上で特に問題はなかったんですが、今まで自分が趣味で作った模型とは違って、撮影や展示が行なわれるので、ねじの頭が出ないようにとか気を使いました。あと、ミサイルハッチ開閉のギミックに苦労しましたね。

今日は、ちゃんと水の中で走ってくれるかの保障がなかったのでどきどきものでしたが、思ったよりしっかり走ってくれて安心しました。やはり、基本設計が現実的にあり得るものだからでしょうね。ただ、なかなか旋回してくれないのには苦労しましたが(笑)」

また、この日は原作者の一人である小澤さとるさんもいらっしゃっていました。
「本当に水の中に沈むのかどうか心配したんだよ(笑)。でもちゃんと潜って一通り動いてくれたから、役目は果たしたかな(笑)。
これで水中からミサイルの発射でもしてくれないかなあ(笑)」


原作者の小澤さとるさん


ユリシーズのデザインを担当した
山根公利さん


山根さん・小澤さん・平尾さんと
ユリシーズを前に記念撮影

そして、やはり見学に来られていたメカデザイナーの山根公利さんは、以下のようにコメントされていました。

「こんな大きな模型を作ってもらって嬉しいですよね。潜水艦というのは地味でなかなかキャラ的に立たないんですけど、今回はここまで作ってもらってラッキーでした。仕事をする上でも俄然張り合いがあるというか、やる気が出ますよ。

潜水艦を上下に2つつなげたような形にしたのは、アニメーション的にはぱっと見でユリシーズとわかるインパクトあるデザインにしたかったのと、小型潜行艇の収納スペースを作るとき、『サブマリン707』とかのようにセイルの前後につけた既存のデザインとは違うものにしたくて第2船体をつけました。

設定としては、ハンマー・オブ・エデンによる人的損害が大きくて、人員不足になっているため2隻をつなげて1隻として運用し、人員を節約しているということになっています。個人的には、オハイオ級戦略潜水艦とロサンゼルス級攻撃潜水艦をそのままくっつけたイメージです。

潜舵や横舵の位置とか理屈で考えるとおかしいところもあるけど、アニメのキャラクターということで勘弁してください(笑)。こうして見てみると、けっこうよく動いてますし(笑)。

このユリシーズは純粋に戦闘艦ですが、今度は海の神秘を探検するような夢のある潜水艦もデザインしてみたいですね」

1/100ユリシーズは、無事航行テストやプールの底深度3メートルまでの潜行テスト、緊急浮上のほか、浮上してのミサイルハッチ開閉も成功。プールに潜ったダイバーによる水中撮影も行なわれ、1/100ユリシーズは大活躍でした。


水中カメラ撮影の様子


緊急浮上の瞬間は大迫力!


大きな故障もなく撮影中
常に動き回っていたユリシーズ

艦船との戦いを再現!?


のぞき窓から撮影したユリシーズは
空中に浮いているようでした


水圧にもめげず
水底までの潜水に成功

プールの利用状況を説明してくれた
海洋研究開発機構の西村さん